1914年1月28日東京生まれ。本名繁田裕司。‘40年東大法学部卒業。’46年NHK「歌の新聞」につづいて「日曜娯楽版」「ユーモア劇場」と社会風刺を中心とする「冗談音楽」でラジオ界に旋風を巻き起こす。「ボクは特急の機関士で」「田舎のバス」などのヒット曲がある。

‘51年民間放送が開始されると、「明るいナショナル」「ワ・ワ・ワ・輪が三つ」「キリンレモン」「ルルの歌」など、今もなお唄い継がれている、いわばCMソングのエバーグリーンともいえる曲を多数作詞作曲。その後ディズニー映画「ダンボ」「わんわん物語」の日本語版音楽監督や、「鉄人28号」「トムとジェリー」「ジャングル大帝」他のテーマソングを手がけ、日本のポピュラーミュージックを先導した。’94年逝去。

2005年には、三木鶏郎の、時代を超えたすばらしい音楽を改めて紹介したい、という趣旨のもと、次の世代のミュージシャンたちによるトリビュートイベントが開催された。「Sing with TORIRO 三木鶏郎と異才たち〜Pop-A-Doodle-Doo!〜」(銀座博品館劇場)と名づけられたそのライブイベントには、鈴木慶一、細野晴臣、鈴木惣一朗、ハナレグミ、畠山美由紀、今野英明、高野寛、坂本冬美(敬称略)らとともに、湯川潮音も参加した。

2006年、キリンビバレッジ「アミノサプリナイン」CMに三木鶏郎の「タララ・プンカ・ポンカ・ピ」が採用され記念CDも発売、また、人気HP「ほぼ日刊イトイ新聞」でも、糸井重里氏と大瀧詠一氏や、細野晴臣氏と鈴木慶一氏の対談、「―三木鶏郎を知ってるかい?―」が連載されるなど、没後13周忌を迎えた今も、“三木鶏郎“の音楽はバトンとなって時代から時代へ走り続けている。
2005年12月に開催されたイベント、「Sing with TORIRO 三木鶏郎と異才たち〜Pop-A-Doodle-Doo!〜」に参加させていただいてからというもの、三木鶏郎氏の音楽の中にある、誰にでも口づさめる、時代を超えた普遍性、つらい時期にあえてカラッとして楽しい歌を生み出す精神、挑戦する気骨・・・にすっかり魅了されてしまった湯川潮音。その後の自身のライブにおいても「ポカンポカン」を数度に渡りカヴァーしていましたが、改めて、このすばらしい音楽家の作品を唄わせていただき、音源として残したい、と考えました。

早速、お話をうかがったところ、『冗談音楽』やCMソングなど、ユーモラスでウィットに富んだ音楽で語られることの多い三木鶏郎氏が、特に「リリカルソング」と名づけ、大切にされていた、ロマンティックでセンチメンタルな楽曲の中から、「新しい世代にぜひ編曲して唄ってほしい」と選ばれたもののリストが遺されていると聞き拝見、その筆頭にあった曲がこの『雪のワルツ』でした。それは、切ない雪の夜の歌で、驚くほどモダンな、美しく新鮮な作品でした。

1952年当時楠トシエさんにより唄われたこの曲は、唯一放送音源として残っているのですが、残念なことに本来2番まであるこの曲の1番で終わっており、しかもそれ以降の録音はされていないというのです。泥沼化する戦争のさなか、まさに出征直前のクリスマスの雪の日に、友人、家族、音楽、恋愛に対するさまざまな想いを胸に一人雪道を歩きながら作られたであろう、というこの曲を、湯川潮音はぜひ唄わせていただきたい、とお願いし、このカバーが決定しました。

50年以上もの間、決して古びることなく、いわば「唄われるのをじっと待っていた」知られざる冬の名曲、『雪のワルツ』が、こうして生まれ変わりました。

資料協力 三木鶏郎企画研究所、大森昭男(ON・アソシエイツ音楽出版)